安倍首相へ 明日の自由を守る若手弁護士の会より

明日の自由を守る若手弁護士の会が、安倍首相に憲法の本をプレゼントしたそうです。
以下、明日の自由を守る若手弁護士の会からのメッセージです。
拡散してくださいとのことです。
 
【バレンタイン企画 安倍首相に憲法の本をプレゼント】

 (今回はちょっと長文です~~)
 今日はバレンタインデーですね♪きれいに包装されたかわいらしいチョコがショーウィンドーから溢れそうです♪
 そんな時節柄に合わせて、「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、立憲主義を守るためにこんな企画を立てました。
 題して、 「安倍首相に立憲主義を学んで欲しい!若手弁護士たちから思いを込めてプレゼント」作戦(^^)/

 説明いたしますと、
 ご存知の通り、国会では憲法集団的自衛権に関する質問が相次ぎ、そのたびに安倍首相から暴言が飛び出しています。
 「憲法の性格」について「国家権力を縛るものだという考え方があるが、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的考え方だ。」と答弁したことについては、すでにFBでも取りあげました。...


 さらに2月12日の衆院予算委員会では、集団的自衛権の行使容認(解釈改憲)について、「最高の責任者は私です。私が責任者であって、政府の答弁に対しても私が責任をもって、その上において、私たちは選挙において、国民から審判を受けるんですよ。審判を受けるのは法制局長官ではないんです。」と答弁しました。
 選挙で勝ち、支持率も高いのだから、手続を踏まずにこちらの判断で改憲できるのだ、とでも考えているかのようなこの発言に、唖然とした方は少なくないでしょう。

 一国の首相が、権力を法で縛ること(立憲主義)への懐疑をあらわにし、「数の論理」だけが民主主義のルールかのように理解(誤解)していること自体が、国民の自由と民主主義にとって脅威であること、また国際社会からの信頼を失うきっかけになりかねないことを、改めて強く思います。
 強く思うので…
 
 どうしても、

 どーーしても、

 どーーーーしても、安倍首相に立憲主義を理解してほしいっ!
憲法とはなんぞや、と真剣に学び直してほしいっ!!
…という思いが募ったところで、そうだ、読みやすい憲法の基本書をプレゼントしよう!という今回の企画が生まれました。
 ということで、当会は安倍首相宛てに、チョコレートと、芦部信喜著『憲法』(第5版)、そしてお手紙を送りました(本日到着予定)☆

 勉強しろ、なんて、上から目線のイヤミに見えますか?
 でも、考えてみて下さい。首相は我が国の元首であり、国民の生命・財産・暮らしを守るための数々の政策の執行する、重責を担うエリート中のエリートです。その職をまっとうするためには、(たとえ多くのスタッフの手を借りようとも)まず誰よりも法律・政治・経済等々の知識・造詣が深くある(深くあろうと自ら努める)のが当然なはず。その方に「立憲主義を正しく理解していないのかもしれない」重大な疑惑が生じてしまっている今、私たち法律家は、たとえイヤミに聞こえても、「今一度学んで下さい」と進言しなければならない、と考えるのです。
 この思いが通じて、首相が立憲主義への深い理解へ到達した日には、解釈改憲なんていう理不尽な計画も白紙になるでしょうっ!それを願ってやみません。

 安倍首相への手紙は、以下のとおりです。(長文ですが、どうぞご容赦下さい。)

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謹呈 早春の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
 突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。
 私たち「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、2012年4月に発表された自由民主党憲法改正草案について問題意識をもつ若手弁護士の全国ネットワークです。

  総理は去る2月3日の衆院予算委員会における質疑において、「憲法の性格をどう考えるか」と問われた際、「国家権力を縛るものだという考え方があるが、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的考え方だ」とお答えになられました。

 大変失礼ながら、私たちは法律家団体として、総理によるこのような憲法観のご表明について大いなる懸念を抱かずにはいられません。
 そこで、法律に関わる者にとって「そもそも一体憲法とは何か」という問題が一般的にどのように理解されているかをご説明申し上げます。

 およそすべての人が社会において個人として尊重されるために、憲法最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかるという考え方を「立憲主義」といいます。これは、人間が個人として尊重され、幸福な人生を追求する上で不可欠な自由や民主主義を確かなものにするために、人類が苦難の歴史から学び取った教訓であり叡智であります。これはおよそ現代の民主主義国家全てが共有する、基本中の基本の考え方であり、日本国憲法も当然この立憲主義に立脚し、我が国が敗戦後国際社会において信頼を取り戻す道のりの基盤となってきたことは,言うまでもありません。

 民主主義の政治体制をしく現代の日本においても、およそ主権者たる国民が国家に統治権力を信託し、国家が権力を保有している以上、権力の濫用を防止して国民の自由と人権を確保するためには、この「立憲主義」が憲法の土台であることは今なお必要不可欠です。この意味で、国家権力を縛る機能を有していない憲法は、実質的には「憲法」ではないと申し上げざるを得ません。これは我が国をはじめとする民主主義国家における憲法学のゆるぎのない到達点であり、その普遍性は疑いようもなく、大学法学部ではすべての学徒が基本として学ぶことでもあります。

 ふりかえって先日の、総理の上記答弁は、一国の元首としてわきまえるべき当然の知識を、果たしてお持ちなのか、私たちに不安を抱かせるものでした。

 もしそうであるならば、率直に申し上げますと、そのこと自体が、およそ日本社会に住む全ての市民の自由と民主主義に対する深刻な脅威であると言わざるを得ません。

 総理は、ご自身が握る権力を濫用することは無い(従って憲法よって縛られる必要はない)とお考えかもしれません。

 しかし、権力の無謬性を前提とした政治が必ず権力の暴走を招き、国民の人権が脅威にさらされたことは歴史が証明しており、それゆえ法が権力を縛る発想が生まれたことへ、今一度思いを馳せて頂きたく存じます。

 他方、総理は、1月24日の施政方針演説において「私は、自由や民主主義、人権、法の支配の原則こそが、世界に反映をもたらす基盤であると信じます。日本が、そして世界が、これからも成長していくために、こうした基本的な価値を共有する国々と、連携を深めてまいります」と述べられました。自由と人権に何より尊い価値を置く総理の姿勢を大変心強く感じつつ、それではなぜそれらの価値と密接不可分な関係にある立憲主義の考えを、あたかも現代に通じない過去のものであるかのように答弁されたのかという疑問が払拭できません。

 総理が立憲主義ないし憲法の本質につき十分にご理解されていないのであれば、自由・人権・法の支配の原理を基本的な価値とする他国と「連携を深める」ことなどできるはずもなく、私ども法律家団体といたしましては、憂慮せざるをえません。

 大変僭越ながら、法律家団体として、お願い申し上げます。
総理におかれましては、今一度、立憲主義ないし憲法の本質を深くご理解頂きたく存じます。一国
の元首としてはもちろん、さらにご自身が先頭に立って改憲の議論を盛り上げるおつもりであるならなおさら、これらの基本知識が誰よりも万全でおられなければ、残念ながら私たち国民は総理と総理が率いる政権に安心して国政を信託できかねます。
 時節柄、バレンタインデーですので、当会より総理に、チョコレートと憲法の基本書を謹呈いたします。その基本書が最良か、当会内でも議論がございましたが、我が国戦後の憲法学を先導し、今なお多くの法学の徒から支持を受け続ける故芦部信喜東大教授の著書を選ばせて頂きました。どうぞお納め下さい。
 我が国の民主的な発展と繁栄を心から願うがゆえの進言です。失礼の段、どうぞご海容下さい。

 2014年2月14日

「明日の自由を守る若手弁護士の会」

 共同代表 弁護士  神保 大地
 同   元弁護士 黒澤 いつき

 内閣総理大臣 安倍晋三様 
  
東京新聞2月14日の記事↓ 右下にカーソルをあわせると拡大マークが出ます。
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