1947年に文部省が発行した教科書「あたらしい憲法のはなし」

文部省が1947年に発行し、中学1年生の社会科の教科書として使われた「あたらしい憲法のはなし」をご存知ですか?
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1947年文部省『あたらしい憲法のはなし』復刻版
 
「あたらしい憲法のはなし」は、憲法が施行されてまもなく、憲法の普及を目的として、新しく義務教育となった中学校の一年生向けに社会科教科書(副読本)として文部省が発行したものです。政府が国民に対してあきらかにした、公式の憲法解説書といえます。(中略)しかし1950年の朝鮮戦争勃発、その翌年のサンフランシスコでの講和条約調印など日本がアメリカよりの進路をとるなかで、わずか2、3年しか使用されなかった「受難」の本です。(2004年に発行された復刻版のまえがきより)
 
紙の本では新日本婦人の会日本平和委員会によって復刻版が発行されています。
http://www.j-peace.org/syuppan.html ←日本平和委員会発行の本
 
電子書籍ではアマゾンkindleやアップルiTunesで無料で出てくるそうです。
 
この本の「一 憲法」は「みなさん、あたらしい憲法ができました。」で始まっています。
憲法について、憲法とは何かをわかりやすく解説してあります。
それについても後日書くつもりですが、今日は「六 戦争の放棄」について紹介します。
7月24日に更新したブログ「まず、総理から前線へ」で、憲法9条自民党憲法草案の超口語訳を載せました。それと読み比べてみてください。
憲法9条は、第二次世界大戦で大きな犠牲を払って私たちが手にいれた平和憲法です。
この憲法を失ったら、あの戦争で亡くなった多くの人たちの命に申し訳がないのです。
もう二度とあのような悲惨な戦争に日本国民が巻き込まれることのないようにとの願いからつくられた憲法なのです。
だから戦後に生まれた私たちは戦争に巻き込まれることなく、平和が当たり前と思って生きてくることができました。それをここで戦争のできる憲法に変えられるのを許してしまったら、今の子どもたち、これから生まれれてくる命に対しても、申し訳ないことになります。
 
憲法9条が生まれたときはどんな時代だったのか、それをどんな思いで私たちは受け継いできたのか、「あたらしい憲法のはなし」を読んで感じ取ってください。
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あたらしい「憲法のはなし」
六 戰爭の放棄
 みなさんの中には、こんどの戰爭に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとう/\おかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戰爭はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戰爭をして、日本の國はどんな利益があったでしょうか。何もありません。たゞ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戰爭は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戰爭をしかけた國には、大きな責任があるといわなければなりません。このまえの世界戰爭のあとでも、もう戰爭は二度とやるまいと、多くの國々ではいろ/\考えましたが、またこんな大戰爭をおこしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。
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 そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戰爭をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戰爭をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戰力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
 もう一つは、よその國と爭いごとがおこったとき、けっして戰爭によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの國をほろぼすようなはめになるからです。また、戰爭とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戰爭の放棄というのです。そうしてよその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆけるのです
 みなさん、あのおそろしい戰爭が、二度とおこらないように、また戰爭を二度とおこさないようにいたしましょう。
 
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日本国憲法第二章 戦争の放棄
9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力により威嚇または武力の行使は 国際紛争を解決する手段としては、永久に これを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は これを保持しない。国の交戦権は これを認めない。