5.3憲法集会(2) 大江健三郎さんのスピーチ

5.3憲法集会(1)http://blogs.yahoo.co.jp/mknony0623/20006219.html  からの続きです。

大江健三郎さんのスピーチです。
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大江さんのスピーチの動画です。↓


今日はこんなに多くの方が集まってくださいました。
かつて私が出していただいた集会で一番大きい人々の集まりという印象を受ける。
私はとても力づけられています。
ところが私は最初にちょっとお話しますのが、私の友人の話でありまして
それは私にとってはあまり元気のいい話ではない。
ちょうど3月のことですが ギュンター・グラスという小説家が亡くなったことをご存知だと思います。
 
私はあのとき、突然、ドイツからグラスの手紙がきた。
私に往復書簡をやろうじゃないかというもので
私はそれに答えました。
グラスというのは20年前、非常にすぐれた大きい作家でした。
私は、彼から手紙が来るというのは意外だった。
その最初の手紙はどういうことだったかというと
「君が文章をかいている、その中に長崎と広島について触れてい部分がある。それに強い印象をもって読んだ。」
それで往復書簡をしようということになった。
 
この2月の半ばギュンターが亡くなりましたが、ギュンターが亡くなったという新聞記事に
ギュンター・グラスが人生の最後のひとつのインタビューを行ったというもので、そのインタビューの文章が紹介されていた。
私はそれに強い印象を受けた。
グラスの言葉は小説の世界でははげしい強い人であるが、穏やかな人であって
こういう言葉でインタビューが行われていた。
 
各地で戦争が起きている。われわれは以前と同じ過ちを犯すおそれがある。
これを自覚しておかないと、夢遊病者のように世界大戦に突き進む可能性もある。
グラスは穏やかないい方ではあるが、言った。
グラスは世界大戦に突き進む可能性があると言ったとき、彼の心の中には何があったか。
 
核兵器による核戦争。またそれは大きい原発の事故も含まれるが
核爆発によって世界が滅びてしまうような戦争が、実は次の戦争なんだというグラスの考え方がそこに見てとられる私は思った。
 
そう思う理由が、今申した20年前に彼から手紙がきた。そして私たちは往復書簡を行った。
その主題が私たちがどのようにして、この最終戦争から自分たち市民を救うかということだった。
それが私は現在の亡くなる前のグラスにも、彼にとって、それは起こらないだろうという確信があったのではないだろうと思う。
そしてわたしにしましても世界最終戦争がおこらないという確信をもっているのではない。
むしろその可能性が大きくなってきているのではないかという思いをもっている。
 
そういうときに彼の死にふれた。
そして彼が最後にもっとも考えたことが、世界大戦が起こるということ。
そして、世界大戦は核兵器による戦争に違いないです。
こんなにたくさんの核兵器があるのですから。
それが最終的に もっとも力をもつ兵器は、どのような陣営がそれを使うにしても核兵器なのですから。
それを彼は考えていると思った。私も考えたということです。
 
このようにあまり元気でない話ではじめましたが、
今、日本人が海外に向かって、外国人に向かってしゃべった非常に重要な問題を非常に饒舌にしゃべったいうことがある。
それはアメリカの上院、下院のふたつの議院で、政治家たちに向かって、日本の首相が、安倍首相がしゃべった演説であります。
それを彼が英語でやったものを録音でも聞いたし、テレビでも放送された。
 
そこで私が考えたことは、この人が述べていることは決して、私たちにとっては
すなわちここに集まっている人たちを含めて、原発について、原爆について非常に重い不安をを抱いている、それをなんとか乗り越えることができるかどうかを考えていて、
たとえばそれをグラスは乗り越えることはできないと思って、のまま死んだし
私もまたその思いのまま去っていくのではないかと思っているからです。
 
そういう私にとって、安倍首相が元気にしゃべったアメリカでの両院での講演というものは私は嘘に満ちていると思う。
あまりに露骨な嘘で彼がしゃべっている
ところがアメリカでも放送されたし、日本でも放送された。
 
それに対して、はっきりした拒否の言葉が実はアメリカ人からも日本人からも効果的に述べられることはなかったのではないか。
それを私たちはどのようにひっくりかえすかというのが今、もっとも大きい問題のひとつであると思うからであります。
 
彼が言った。日本は、今、集団的自衛権というものを、これまで日本人は憲法でそれが禁じられているという意見で、それを自分たちは活用することはなかった。
アメリカと日本の大きい同盟関係の中で、しかしアメリカと共に集団的自衛権を使うことをけしてしなかった。
ところが彼はそれを今、使おうとしている。
それは日本が自分たちにとってもっともたよりになるな有力な仲間であることを示すものである、というのがアメリカへの反応でした。
それを意識して安倍首相はあの話を長々と続けたと思います。
 
ところが、私たちは、日本が集団的自衛権をもちいて、世界中の、日本の周辺ということはもすでに言っていない世界のあらゆる場所で戦争が起こる、アメリカに対する攻撃が起きる、そのとき日本はそれにたいする抵抗を 軍事的な抵抗をやろうとしていると安倍はそれをはっきりいったわけです。
 
しかも、自分はそのために法律をいくつも作ろうとしてしているとをいった。
これを聞けば、多くのアメリカ人もヨーロッパ人も、日本はあの憲法の 特別な生き方があるのだ、それはあの大きな戦争の犠牲の上にたって、自分たちは決意したものであって、それをずっともちこたえてきているのだ、とそれが日本に対するわれわれのかんがえかただった。ところが今、安倍はあの考え方は、日本人はそれをのりこえたんだと。
もうそれは日本人の考え方ではないと。
日本は世界のあらゆる場所で、戦いが起これば、アメリカと積極的に参加するだろう。それを彼らは積極的平和主義とよんでいる。
 
そう多くのアメリカの新聞は報道した。
それは安倍が話したからです。
 
ところが、それは本当だろうか
安倍は確かに今言ったような考え方を述べている。
安倍は実際に行おうとしている。
ところが、安倍は実際にそれを国会で議員たちにはっきり説明したことはない。
今にいたって政治的な場所で、大衆的なこういう場所で彼がはっきり、自分たちが憲法を捨て去る決意をしたんだということを言ったのではない。
それが実は日本人が国会でそれを採用しようとしているのだと、
そして、来年あるいは再来年に憲法がつくりかえられるだろう
日本はすっかり新しい存在になって、
それを世界のための、アメリカの戦争に対して、
力強い仲間になるだろうと、外国でくりかえし言いながら
日本では、まだそれを国会で、それに準ずるような場所ではっきり述べて、
われわれの日本人の承諾を得たこと、賛同を得たことはないんだ。
 
それを私たちはあらためてかんがえなおさなければならない。
それをはっきりいう必要があると私は考えるものであります。
集団的自衛権を使うということを国会でそれのために法律を作ろうと彼らは言っているけど
それができたわけではない。
しかも、今年の秋の国会で、あるいは来年、自分たちは確実に集団的自衛権も含めて
積極的な平和主義の世界中の戦いにする憲法にするのだと安倍は言っている。
実は国会でためしたことはないというのが現状です。
 
しかも安倍のこの態度は世界的な宣伝として成功しているんじゃなかと思う。
それは日本人への宣伝としても成功しつつあることを言わなければならない。
それが私の一番くらい思いでいる理由です。
 
ところが、今、ここに参りまして、このように集まってくださっている、そして自分たちがどのような政治的な意見をもっているか、
どのように自分たちが未来に対して
これまでの憲法を守り抜くこという非常に長い 強い決意と歴史にたって、
自分たちは集団的自衛権は拒否するし
安倍のいう積極的平和主義などという戦争への自己弁護、自己主張を認める 
を認めるわけではない。
それを大きい声でわれわれは言いたいし、われわれはそれを聞きたいという思いがある。
私のような老人で、長くこういう場所で出てきて、大勢の人の前でお話するのは
きっとこれが最後だと思うが、
そういう私たちがしかし、はっきりした意思をもって
憲法というものを守ろうとしている。 本当の平和主義を守ろうとしている
そして未来に向かって悔いを残さないようにしようとしてるということを
非常に確実に述べた文章があると思う。
 
それは今、ここに集まった方、みなさんがもっている5.3憲法集会のビラで
そこに非常に力強い
日本人のとるべき道をまもめてあって、 確実に述べられている
みなさんの手に渡って、みなさんの大きい共感をまきおこしているに違いないと思うわけです。
私が読む必要もないけど、
家にお帰りになって家族の方とお話するきっかけになるよう
私の話を終えなければならないが、時間でありますが
その最後の言葉として 自分が今、一番、大切だと思っている言葉を
命があればそれを守りつづけようと、それを主張し続けようと願っている思いをこめて
 読み上げたいと思います。手元にあるかたはごらんになってください。
 
チラシの右下にカーソルをもっていくと拡大マークが出ます。
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これをみなさん方は自分たちのスローガンとしてみなさんは集まっておられる
これが私たちの思想です。私たちの生き方、考え方の根本にあるもの。
これを私はみなさんとここであらためて確認したい
自分が生涯やってきて、もう二度とすることはないと思いますが、
自分がこれだけのみなさんの前で声を大きくして語るその最後のものとしたいと思う。
それが私が願ってきたことです。
ここにやってきました。みなさんの前でお話することができました。
それを私は喜びます。
 
憲法集会(3)に続きます。→ http://blogs.yahoo.co.jp/mknony0623/20006299.html